「サクラサク」角田裕毅の吉報は届くか──

F1世界選手権2025年シーズンの開幕早々から、角田裕毅をめぐる動きが非常に注目されている。レッドブルに昇格した昨年の僚友リアム・ローソンが完全に“停滞”してしまい、角田待望論がF1界全体から聞こえてくるほどだ。日本GPを直前にした今、角田の想いは成就するか──
尾張正博 2025.03.27
誰でも

 日本GPを前に、レッドブルが不振のリアム・ローソンに代えて、レーシング・ブルズの角田裕毅を起用するのではないかという報道が続々と報じられている。

 中国GP直後にまずドイツのスカイ・スポーツ・ニュースが報じ、イギリスのmotorsport.comとAUTOSPORT.comがそれに続いた。その後、アメリカのスポーツ専門局ESPNとオランダ紙テレグラフ、そしてフランスの放送局カナル・プリュスも可能性が高いことを報じ、3月25日(火)にはロイターやAFPといった世界的通信会社も一斉に、このニュースを成果に発信した。

 もし、これらの報道が誤報だった場合、チームは即座にメディアに否定のメッセージを流さなければならないが、それを行なっていないところを見ると、角田が日本GPでレッドブルから出走する可能性は極めて高い。

 これらの報道の中で、「角田がレッドブルに移籍するために、ホンダがレッドブルと交渉している」という内容の報道があった。これだけを読むと、ホンダがローソンのシートを大金をはたいて買い上げて角田に与えたかのように思われるが、それは事実ではない。

 ホンダが角田のF1での契約に関してどのように絡んでいるのかを、筆者は今年の開幕戦オーストラリアGP期間中にメルボルンで、ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長に単独インタビューしている。というのも、ホンダと角田の関係は、日本のメディアでも誤解している人が少なくないため、一度明確にしておきたかったからだ。その詳細は、オートスポーツwebに掲載される予定なので、そちらを確認してほしいが、その中で渡辺社長は2025年末まで角田がどのチームで走るかに関する話し合いには、決定を下す前にレッドブルはホンダと協議することになっているという旨の発言をしている。

 つまり、今回もしレッドブルが角田をローソンの代わりにレーシングブルズから移籍させ、日本GP以降レッドブルで走らせたい場合は、レッドブルは事前にホンダにそのことを相談し、合意を得なければならないことになっている。

開幕戦メルボルンでの角田祐毅と渡辺康治HRC社長とのツーショット

開幕戦メルボルンでの角田祐毅と渡辺康治HRC社長とのツーショット

100%乗りたい! レッドブルの方が速いから

 では、角田は今シーズン好調のレーシングブルズから不調でもレッドブルへの移籍を希望しているのか。しかも、昨年チームメイトのローソンが今年のRB21を乗りこなせていない状況を考えると、このタイミングでの移籍にはリスクが伴うからだ。すでに元F1ドライバーのラルフ・シューマッハーは「私がツノダのマネージャーなら移籍させない」と語っている。

 しかし、角田はこう言い切る。

「(レッドブルのマシンに乗りたいかと問われれば)100%乗りたいです。だって(レッドブルの方が)より速いマシンだから。僕は今、好調ですし、100%準備はできています」

 角田がこう語るのには、理由がある。それは昨年の12月にレッドブルのマシンをテストしているからだ。

「昨年のマシンをアブダビでテストしましたが、レッドブルのマシンが扱いづらいとか、違和感はありませんでした。その時、マックス(・フェルスタッペン)とは一緒に走っていないので、彼とのペース差も分からないし、今年のクルマであるRB21はドライブしたことがないので、正直分かりません。でもドライバーはいつだって、マシンに応じた走り方を求められます」

昨年、アブダビで行なわれたテストでレッドブルRB20をドライブ

昨年、アブダビで行なわれたテストでレッドブルRB20をドライブ

 つまり、チャンスがあれば、扱いづらくとも、速いマシンに乗りたいというのが角田の本音だ。そのことは角田とコミュニケーションを密にとっている渡辺社長も理解している。

「角田選手がF1にステップアップしてから今シーズンまで、彼が乗るシートに関して、ホンダはレッドブルと常に協議を行なってきました。それはパートナーシップが切れる2025年末まで続きます」

 レッドブルがホンダとの協議を経て、角田を正式に日本GPからレッドブルに乗せるという決定を下した場合、角田は少し忙しくなる。というのも、角田は中国GPの後、ヨーロッパに戻らずに日本で過ごしていると思われるからだ。もし、チームを移籍するのなら、新しいチームでのシート合わせやシミュレーターによる事前の準備、新しいスタッフのコミュニケーションなど、やるべきことが山のようにある。もし、日本GPでレッドブルが角田を起用するのなら、すでに決定は下され、角田をイギリス・ミルトンキーンズのファクトリーに呼んでいるはずだ。

 気になるのが、角田の日本GP前の公式スケジュールだ。角田は4月2日に東京お台場で開催される、「Red Bull Showrun x Powered by Honda」に参加するが、その前に3月30日(日)に、東京・青山にあるホンダ本社の「Hondaウエルカムプラザ青山グランドフィナーレ Welcome Plaza Forum」にも参加する予定となっており、もしイギリスに帰国している場合、このイベントに参加するのは難しいかもしれない。

 東京ではすでに桜が開花した。角田に「サクラサク」の吉報は、届くのだろうか。

世界中大多数が角田のレッドブル昇格を支持している。果たして、その時は訪れるか!?

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